大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

千葉地方裁判所 昭和60年(わ)669号 判決 1985年12月20日

本店の所在地

千葉市千葉寺町五七一番地

有限会社 中央商事

右代表者代表取締役

徳山清一こと 朴且碩

国籍

韓国

住居

千葉市千葉寺町六八七番地の一

会社役員

徳山清一こと朴且碩

一九一二年六月一八日生

(外国人登録上の生年月日は一九〇五年六月一八日生)

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官能澤孝出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社中央商事を罰金三〇〇〇万円に、

被告人朴且碩を懲役一年六月にそれぞれ処する。

被告人朴且碩に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社中央商事は、千葉市千葉寺町五七一番地に本店を置き、浄化槽の清掃管理及び尿処理を営業目的とする資本金一〇〇〇万円の有限会社であり、被告人徳山清一こと朴且碩は、被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人朴且碩は、被告人会社の業務に関し、法人脱を免れようと企て、浄化槽清掃及びし尿処理の売上収入の一部を除外して架空名義の預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億六九八万八三四六円であったのにかかわらず、同五七年二月二五日、同市新宿二丁目六番一号所在の所轄千葉東税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一八一九万五四九七円で、これに対する法人税額が六六〇万三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、前記事業年度における正規の法人税額四三八九万三三〇〇円と前記申告税額との差額三七二九万三〇〇〇円を免れ

第二  同五七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億二五五四万六三八三円であったのにかかわらず、同五八年二月二八日、前記千葉東税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三〇六一万一四八七円で、これに対する法人税額が一一八三万三五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、前記事業年度における正規の法人税額五一七〇万六二〇〇円と前記申告税額との差額三九八七万二七〇〇円を免れ

第三  同五八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億二七九六万四五七四円であったのにかかわらず、同五九年二月二八日、前記千葉東税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一九三一万八三五九円で、これに対する法人税額が七〇六万四七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、前記事業年度における正規の法人税額五二六九万六〇〇〇円と前記申告税額との差額四五六三万一三〇〇円を免れた

ものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人朴且碩の当公判廷における供述

一  被告人朴且碩の検察官に対する昭和六〇年三月八日付及び同月一八日付各供述調書

一  被告人朴且碩の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  新井勇こと朴東文の検察官に対する各供述調書

一  伊藤あさの検察官に対する供述調書

一  片山美保子、新井亨淑こと李亨淑及び鶴見操の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  山本奈美子の大蔵事務官に対する昭和五九年七月五日付質問てん末書

一  大蔵事務官作成の売上調査書、受取利息調査書及び事業税認定損調査書

一  検察事務官作成の報告書

判示冒頭の事実について

一  千葉地方法務局作成の登記簿謄本

判示第一ないし第三の事実について

一  検察事務官作成の電話聴取書

判示第一の事実について

一  千葉地方検察庁で保管中の法人税確定申告書(昭和五六年度分)一袋(昭和六〇年千葉検領第一九二号の一三八)及び総勘定元帳(昭和五六年度分)一綴(同号の二一)

判示第二の事実について

一  千葉地方検察庁で保管中の法人税確定申告書(昭和五七年度分)一袋(昭和六〇年千葉検領第一九二号の一三九)及び総勘定元帳(昭和五七年度分)二綴(同号の二二)

判示第三の事業について

一  千葉地方検察庁で保管中の法人税確定申告書(昭和五八年度分)一袋(昭和六〇年千葉検領第一九二号の一四〇)及び総勘定元帳(昭和五八年度分)二綴(同号の二三)

(法令の適用)

被告人有限会社中央商事の判示各所為はいずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に、被告人朴且碩の判示各所為はいずれも同法一五九条一項にそれぞれ該当するところ、被告人会社については情状により同法一五九条二項を適用し、被告人朴且碩については所定刑中懲役刑を選択し、以上はそれぞれ刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により各罪所定の罰金を合算した金額の範囲内で、被告人朴且碩については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした形期の範囲内で、被告人有限会社中央商事を罰金三〇〇〇万円に、被告人朴且碩を懲役一年六月にそれぞれ処し、被告人朴且碩に対し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は法人税の脱税事犯であるが、納税は国民の義務であり、租税は国家の重要な財政収入なのであるから、その義務に反する脱税は国の財政経済を阻害するものであるとともに、他の者、国民全体の犠牲において不正に自己の利得をはかろうとする反社会的な悪質な犯罪であるところ、本件は三事業年度にわたって合計約一億二二七九万円もの法人税を免れようとしたものであってその金額も大きく、また、ほ脱率も平均約八三パーセントと高いこと、更に、被告人朴は、昭和五四年にも税務署から脱税を指摘されたばかりであるにもかかわらず、今回またこのような犯行を繰り返したことなどにかんがみると、被告人らの刑事責任は軽視することができない。

しかしながら、被告人朴は、韓国人である自分と日本人女性との間に生まれた三人の娘の将来を慮るあまり、娘達のために金を残してやりたいと考えて本件犯行を敢行したものであると認められる面もあること、修正申告した申告税額は既に支払い、重加算税等も月々支払うことになっていること、被告人朴は七三歳の老令であり、かつ病弱であること、本件につき反省していることなど被告人らに有利な情状を考慮して、主文の刑に処したうえ被告人朴についてはその刑の執行を猶予することとした。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石田恒良 裁判官 古口満 裁判官 立石貴美子)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例